青春18きっぷの使い方から裏技まで全部紹介します!

青春18きっぷ研究所

青春18きっぷの売上はどのように分配されているのか?

青春18きっぷはJR各社で販売されています。そしてJR全線に乗り放題。ならば、売上をJR各社でどう分配するのか、という疑問が出てきます。

この分配方法については公表されていません。ですから、推測するしかないのですが、その手がかりはいくつかあります。解説していきましょう。

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分配方法は国鉄民営化時に決められた

まず、青春18きっぷは、国鉄時代からのきっぷですから、分配方法は民営化された1987年に決められたはずです。当時は、JR北海道や四国などの離島会社の相対的売上は今より大きかったはずなので、当時の枠組みが今も活きているとするならば、離島会社には有利な分配になっているはずです(もちろん、毎年見直されている可能性もあります)。

次に、2010年の東北新幹線青森延伸時に、青い森鉄道の一部で青春18きっぷが利用可能となるという変更がありました。このときに骨を折ったのがJR東日本です。となると、JR東日本は、青春18きっぷ存続に積極的であるといえそうです。これは、JR東日本が十分な分配を得ているからかもしれません。

さらに、青春18きっぷ期間中の各社の運転ダイヤを見ていると、おおざっぱにいって、JR東海がその活用にあまり積極的でないことが見て取れます。JR東日本は青春18きっぷ期間中に各地で快速の臨時列車を運行していますが、JR東海はほとんどありません。

この理由ははっきりとはわかりませんが、JR東海は十分な分配を得てないのではないか、と推測できます。青春18きっぷで最も利用される路線は東海道本線と思われますが、その大半を運行しているJR東海の分配が少なければ、積極的になりたくてもなれない、ということかもしれません。

こうした状況証拠をつなぎ合わせると、青春18きっぷで十分なメリットを受けているのがJR北海道、JR東日本、JR四国、JR九州の各社で、JR東海は不利、JR西日本はニュートラル、ということなのかもしれません。全体の多数決で、青春18きっぷは今も存続している、という推論に至ります。

在来線総延長に比例させる?

では、JR東海に不利な分配とはどういう形でしょうか。可能性として考えられるのは、在来線の総延長に比例して分配する、というものです。この場合、JR東海はJR全体の約10%にすぎません。JR東日本が約37%、JR西日本が約25%です。JR東日本とJR西日本の両社への分配は合理的に見えますが、普通列車の運転の少ないJR北海道が全体の12%の収入を得ることにもなります。

線路の総延長ではなく、在来線列車の運行距離の総計に比例させるという方法もあるでしょう。さらに編成車両数を勘案させれば合理的な分配方法になるといえます。とはいえ、その場合は首都圏で普通列車の高密度運転をしているJR東日本が圧倒的な分配を得ることになってしまいそうです。

各社で平等に分配される?

一説には、青春18きっぷの売上は、JR6社で平等に6等分されている、と言われています。真偽は定かではありませんが、事実なら旅客輸送量の多いJR東日本にはとんでもなく不利なしくみです。

ただ、筆者はこれもあり得ると考えています。この場合は、青春18きっぷは離島会社への経営支援的な意味を持つことになりますが、旧国鉄分割時に、その程度の配慮があっても不思議ではありません。当時はまだ親方日の丸でしたし、離島会社の経営問題は当時から心配されていたからです。

JRに分かれてから、全JRで共通で乗れる企画乗車券はほとんど発売されていません。それは、収益の合理的な分配方法が確立されていないことも一因と思われますが、「6等分説」ならばそれを矛盾なく説明できます。

アンケートを基に分配額が決まる?

青春18きっぷを購入すると「アンケート」がついてきます。実際に乗車した区間などを回答して駅で渡す、という仕組みです。

このアンケートは利用動向調査といえますが、これが青春18きっぷの各社分配の元データになっている、という説もあります。つまり、アンケートを基に各社別の利用者数を推定し、それに基づいて分配する、というものです。

アンケートに答える人がどれだけいるのか、という疑問がないでもありませんが、サンプルが数千も集まればそれなりの精度は出ます。ただ、どこまで正確かわからないアンケートで、大切な収益配分をすべて決める、というのもやや疑わしいともいえます。

また、普通に考えれば、アンケートの結果はJR各社の定期外輸送人員にほぼ比例すると思われます。となると、JR東日本が半分近くをとり、本州3社で合計9割近い分配になってしまうでしょう。規模の小さなJR四国などは、1回分あたり数十円の売り上げにしかならない、という可能性もあります。そうした分配率で、このきっぷが存続できるのか、という疑問も浮かびます。

高校生の通学定期券売上高に比例させる?

当サイトに投稿された新説です。そもそも青春18きっぷが発売された背景には、学休期に余剰となる普通列車の輸送力を活用しようという発想があります。とくに、地方ローカル線では、高校生の通学需要が鉄道輸送において大きな割合を占めます。ならば、青春18きっぷの売り上げ分配を高校生の通学定期券売上高に比例させている、という考え方です。

青春18きっぷの「元手」が何か?という原点に立ち戻ると説得力のある説でしょう。他の要素も含めた分配率決定の要素の一つ、と考えると合理性はあります。

毎年80億円の売り上げ

ところで、青春18きっぷはどの程度の売上があるのでしょうか。JR東日本の青春18きっぷの販売枚数をこちらに掲載しました。2000年度以降の最大が2006年度の35万5133枚、最低が2010年度の23万8954枚です。2010年度は高速道路無料化のあおりを受けての激減と思われますが、2000年度から2009年度までは、毎年25万枚以上を販売していました。2012年度も25万枚あまりを販売しています。

全国の販売枚数に関しては、2014年7月26日朝日新聞夕刊に数字が載っていて、2013年度が年間67万枚だったそうです。この場合、年間のJR全社の総売り上げは約77億円ということになります。増減はありますが、毎年80億円前後が総売上のようです。これを単純に分配すると1社あたり約13億円になります。

連結売上高2兆5000億円のJR東日本にとっては、なんてことない数字です。しかし、同476億円のJR四国にとっては、かなり大きな数字です。JR四国の旅客運輸収入は年間200億円程度ですから、青春18きっぷの売上総額80億円というのは、四国1県あたりの旅客運輸収入の平均額を超える計算になります。いかに大きな数字かがおわかりいただけるでしょう。

経営体力のかけ離れたJR各社間で売られているこのきっぷ。筆者は、やはりJR各社間で単純に6等分で分配されているのではないか、と推測してしまいます。要するに、事実上の離島会社への経営支援です。上場3社には、そのくらいの度量があるであろう、と信じたいところです。

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